ウイルスは常に変異しながら進化し、新たな変異株は従来株より危険な場合もある。ただデルタ株に関する主な懸念は、より症状が重くなることではなく、人から人へより簡単に広がるためワクチン未接種者の間で感染者や入院患者を増やしてしまう点だ。
英イングランド公衆衛生庁(PHE)は23日、英国でデルタ株に感染して入院している3692人のうち、ワクチン未接種者が58.3%、ワクチンを完全に接種した人は22.8%だったと明らかにした。
シンガポール政府が23日発表した報告では、国内感染の大半をデルタ株が占めており、感染者の4分の3はワクチン接種を終えた人だったという。
世界で最も感染者と死者が多い米国の場合、新規感染者のおよそ83%はデルタ株。これまでのところ重症者の97%近くは、ワクチン未接種者だ。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門医モニカ・ガンディー博士は、多くのワクチン接種者は、軽症になるのをワクチンで100%防げないことに失望しているが、現在新型コロナウイルス感染症で入院中のほぼ全ての米国民がワクチンを打っていなかったという事実は「かなり驚くべき(ワクチンの)効果だ」と強調した。
<高い効果がもたらした皮肉>
最も有効性が高い部類に入るファイザー/ビオンテック製のワクチンでも、イスラエルではデルタ株の浸透によって過去1カ月の感染予防効果は41%にとどまったもようであることが、政府のデータからうかがえる。もっともイスラエルの専門家は、結論を下すためにはさらなる情報の分析が必要だとしている。
ダビドビッチ氏は「自分の発症を防ぐ効果は非常に高い。ただし他人への感染を予防する効果は著しく低い」と説明した。
カリフォルニア州のラホヤ免疫研究所のウイルス研究者シェーン・クロッティ氏は、デルタ株の感染力は英国由来のアルファ株を50%上回ると指摘。「他のあらゆる株よりもずっと効率的に拡散するので、感染競争で他を圧倒している」と述べた。
同じラホヤにあるスクリップス・リサーチ・トランスレーショナル・インスティテュートの所長を務めるゲノミクス専門家エリック・トポル氏は、デルタ株の潜伏期間が相対的に短く、ウイルス粒子の数がはるかに多い点に触れた上で「それゆえに難敵になってしまう。ワクチン接種を終えた人は特に注意しなければならない」とくぎを刺した。
米国では、デルタ株が着実に浸透したまさにそのタイミングで、ワクチン接種者も未接種者も屋内でのマスク着用をやめてしまっている。
Related Keywords