世界最大規模のLPガス充てん基地で
大和田:LPガスの流通を変えるような大型施設をオープンしたそうですね。
柏谷:はい。川崎市に世界最大規模のLPガスハブ充てん基地「夢の絆・川崎」を建設し、今年3月から稼働を開始しました。ここではすべてのボンベや車両、人員の動きを高性能カメラ等で自動認識し、データ化して管理しています。完全自動化設備で5万トン/月を充てんできます。ここでボンベを集中的に充てんし、200本積載できる大型トレーラーで各地にあるデポ基地に一気に届ける仕組みです。デポ基地もセキュリティ・ゲートとカメラにより無人で管理されているため、深夜のオペレーションが可能になりました。渋滞の影響を受けず、短時間で配送できます。
夢の絆と命名した理由は、同業他社にもぜひこの設備を活用していただきたいからです。小売の領域では、価格・サービス面で切磋琢磨しても、インフラの領域では逆に協力し合い、業界全体としてコストダウンを図っていきたいと願っています。
大和田:御社は経営陣が自らデジタル技術に精通し、IT部門やIT企業任せにしていない印象を受けます。これからの時代、企業の経営者はデジタルとどう向き合うべきだとお考えですか。
柏谷:経営者になるための素養として、かつては財務やマネジメントの知識が必要だと言われてきました。今はその筆頭にDXの知識が入ると思います。海外や他業界を見渡せば、DXの先行事例が数多くあります。それらを自分たちなりに取り入れ、試行錯誤を高速に繰り返して失敗を早く体験することが大切だと感じています。
大和田:御社でも失敗事例がありますか。
柏谷:もちろんありますよ。7~8年ほど前、オーストラリアで電力のバーチャルパワープラント(VPP)のベンチャー企業に資本参加しました。夏季や冬季に起きている電力需要のひっ迫を防ぐため、蓄電池やデマンドレスポンス(DR)などの技術でエネルギー供給の平準化を図る取り組みです。そのベンチャー企業は、企業や家庭内にIoT機器を設置して電力消費を最適化する技術を持っていましたが、事業としては失敗しました。着眼点は優れていたので、今後脱炭素が進んでいく中でのエネルギー事業の在り方を考えていく上で、当社としてはとても勉強になったと考えています。
脱炭素の影響で、エネルギー原料の単価は上がっていきます。その中で、エネルギーの小売事業も変化していく必要があります。もしGAFAがエネルギー事業に参入してくるようなことがあれば、我々の優位性などあっという間に吹き飛んでしまうでしょう。だからこそ、常に新しいチャレンジを繰り返し、失敗しながら学んでいく必要があるのです。
DXで組織のフラット化が進行、
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