川田達男[かわだ・たつお]氏
セーレン会長兼CEO(最高経営責任者)
「成功者とは?」と問われたらどんな人を想像しますか。名声を得た有名人でしょうか、それとも事業で成功した大金持ちでしょうか。それらは私の考える成功者とは異なります。成功者とは、自分の夢を実現した人です。したがって、夢を持っていない人は成功者にはなれません。
夢とは具体的な行動によって実現すべき願望です。目指すビジョンが今日の常識とは異なることも多いでしょう。だから夢を本気で語れば時に周囲から「頭がおかしい」と思われてしまう。でも、経営者は少し「Foolish(愚か)」でなければならない。スティーブ・ジョブズ氏は「Stay hungry, Stay foolish(ハングリーであれ、愚かであれ)」と語りましたが、そうした精神が必要だと思うのです。
私は「異端者」と見られ続けてきました。入社してすぐに会社の経営を批判し、左遷されました。企業存亡の危機にあった1987年に47歳で社長に抜てきされたのは、周囲も驚くまさかの人事でした。2005年のカネボウの繊維事業買収では「繊維業界の常識から外れている」と、業界の重鎮から忠告を受けました。会社でも業界でも異端者だった私が、繊維を染色する受託専業だったセーレンをどのように総合繊維メーカーへと発展させたのか。汗をかき、道を拓(ひら)いてきたその過程をお話ししましょう。
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