20年7月27~29日に、県内に降り続いた大雨で最上川水系が各地で氾濫し、26市町村の計1200棟超で全半壊などの建物被害が発生。農地なども合わせた被害総額は約400億円に上った。
国は豪雨災害に対し、上流部のダムや河川掘削など、河川区域内での管理者が主体となるハード面の対策から、上流から下流までの流域全体であらゆる関係者が協働して水害を軽減させる「流域治水」に切り替えた。全国約120水系で「流域治水プロジェクト」が策定され、県内では最上川水系と赤川水系の2水系で、地域特性を踏まえた治水対策がまとめられた。
全国有数のコメの生産県なため、両水系とも「田んぼダム」が対策の一つとして盛り込まれた。ダムは降った雨を水田に一時的にため、ゆっくり河川へ流すことで、河川水量が急激に増えないようにする対策の一つだ。
水田の排水口に水位を調整する特殊な板や装置を設置するだけで、基本的に農家の特別な負担はない。県の担当者は「交付金も加算された。市町村から各地域へ周知して活用してほしい」と話す。
しかし、県によると、県内の水田面積約9万2200ヘクタール(20年度)に対し、田んぼダムは約1200ヘクタール(21年度、交付金ベース)で全体の1・3%。先進県とされる新潟県は、約1万5600ヘクタール(20年8月)で、山形の10倍以上に上る。
田んぼダムに詳しい新潟大農学部の吉川夏樹准教授(水環境工学)は「広域的な戦略と農家の理解、仕組み作りが不可欠だ」と強調。県が、主体的に支流域ごとなどで方向性を示す必要があるといい、「協力しても農業活動に支障をきたさない装置の普及など、今以上に整えていく必要がある」と指摘する。
今ある財産で減災、防災を
佐藤友二事務局長は「これまでは『田んぼダムにすると、今まで以上に労力や経費がかかる』などの誤解もあったが、国の加算措置に加え、独自の上乗せで農家さんが本気になってくれた」と手応えを感じる。「今ある財産(水田)を使って地域のために減災・防災していくべきだ」と広がりを期待する。【野呂賢治】
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