祖国に凱旋 ソ

祖国に凱旋 ソロモン諸島の日本人選手団長、五輪の「希望と不安」


東京五輪に向けた壮行会で、選手団長として意気込みを語る藤山直行さん=2021年7月15日(ソロモン2020応援団提供)
 東京オリンピックの開幕を前に、記者に取材先からこんなメールが届いた。「ソロモン諸島の選手団長として、日本人の友人が凱旋(がいせん)帰国します」。耳慣れない名だが、世界地図を広げてみると、南太平洋に浮かぶ小さな国だった。この選手団長は、縁あって現地で暮らす藤山直行さん(55)=鳥取県米子市出身。新型コロナウイルスの感染者数がゼロの小国から、コロナ禍で異例の五輪が行われる祖国へと戻る藤山さんに、期待と不安を聞いてみた。【生野由佳/デジタル報道センター】
5000キロのかなたで指導、初の選手団長に
 ソロモン諸島は、日本から5000キロ以上も離れた数百の島々からなる。面積は岩手県の2倍ほどで、人口は約67万人。国の中心は、第二次世界大戦中に日米が激戦を繰り広げたガダルカナル島で、首都ホニアラもここにある。
 1978年に英国から独立し、6年後に開かれたロサンゼルス大会(84年)で五輪に初出場した。東京大会の出場は10回目の節目になる。今回出場するのは、マラソン女子のシャロン・フィリスアさん(27)▽重量挙げ女子のメリーキニ・リフさん(26)▽競泳男子のエドガーリチャードソン・イロさん(20)の3選手。ソロモンの選手はこれまでメダルを獲得したことはない。そういう意味では、今回も注目選手はおらず、3選手の目標は「自己ベストの更新」だという。
 ではなぜ、日本人の藤山さんが選手団長を務めているのだろう。
 派遣当時、ソロモンの若い世代はサッカー以外のスポーツにあまり興味がなかったという。練習日に選手がそろわなかったり、雨の日は誰も来なかったり――。藤山さんは、練習前には準備運動をするといった基本的なことから指導を始め、選手に練習の意義や楽しさを少しずつ伝えてきた。高校生らが参加する大規模な体育大会の企画運営をサポートするなどのマネジメント活動にも携わり、やがて、国の代表選手の育成に関わるようになる。
 藤山さんが選手団に同行するのは、2000年のシドニー大会からだ。最初は陸上選手のコーチとしてだったが、12年のロンドン大会からは、日本のJOC(日本オリンピック委員会)に当たるソロモン諸島オリンピック協会役員も兼任。今回の祖国開催で、初めて選手団長に抜てきされたのだ。
 「練習を重ねることによって得られる充実感や達成感が伝わり、今では五輪選手らがリーダーシップを発揮してくれます」。同国のスポーツ振興に30年余り力を尽くしてきた手応えを、こう振り返る。
カネとは無縁、活躍や経験を次世代へ
 国内には陸上用の全天候型施設や公的なプール施設はなく、水泳選手の練習場所はなんと海だという。そもそも真水と海水では浮力が違うので競技と同じ条件では泳げない上に、海ではターンもできない。練習にはさまざまな不利がある。
 そんなソロモンにとって、五輪出場の意義は大きい、と藤山さんは言う。
 今回はもう一つ、期待がある。
在ソロモン日本大使館が主催した、東京五輪に向けた壮行会で、重量挙げのメリーキニ・リフ選手(左から2番目)と共に抱負を語る藤山直行さん(左)=2021年7月15日(ソロモン2020応援団提供)
直前まで渡航決まらず、それでも「特別な大会」
 コロナ禍の「第5波」が懸念され、緊急事態宣言下で開幕する東京大会。ソロモン諸島の選手たちは何を思うのだろうか。
 同国内の感染者数は2カ月近く、ゼロの状態が続き、在ソロモン日本大使館によると、4月1日現在の感染者数は19人にとどまる。選手は全員、新型コロナのワクチン接種を2回済ませた。ただ、日本までの渡航の調整は難航した。本来ならば、オーストラリア・ブリスベン空港などを経由して、日本に入国する。だが、コロナの水際対策として、オーストラリアの国際線は事実上、閉鎖されているからだ。
 藤山さんに取材をした14日夜には、まだ渡航経路が決まっていなかった。藤山さんによると、その後、IOCがナウル航空の特別機を手配した。19日午後、ソロモンの首都ホニアラから選手団を乗せて出発。南太平洋の島国・ナウルを経由してナウルの選手団らも乗せ、20日午後に成田空港に到着した。
 それでも「選手たちに不安はありませんよ」と淡々と言い切った藤山さん。「ソロモンは医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な島国なので、水際対策を徹底しています。感染者も他の国から入国時に判明したのが大半で、市中感染はなかった印象です」。そして、こう説明する。「ですから、街中で誰もマスクはしていません。島外に出づらくはなりましたが、生活は以前のままなのです」
 選手団は、日本では常にマスクをするなど感染対策を徹底する。しかし、ほとんど感染者がいないソロモンと異なり、日本で感染が広がっている状況は、正直言ってまだイメージがわかない様子だという。彼らの不安は、むしろ別のところにある。
 帰国すると、藤山さんや選手たちは全員、3週間の隔離生活が待っている。空港近くに1人1室が与えられ、外部と一切の接触を禁じられるという。「徹底した隔離生活です。選手たちと『2週間の五輪期間よりも長いね』と苦笑しています」
 藤山さんにも残念な思いがある。「祖国だからこそ、日本の文化を紹介したいと思っていました。食事も、文化も、彼らにとっては全く異なる知らない世界です。日本人との交流を通じ、感じるものや学べることがあったと思うのです。ですがルールに従い、出歩くことは一切しません」。そして、もう一つ。プライベートな事情だが、故郷の鳥取に住む78歳の母親が、凱旋帰国となる息子の晴れ舞台を見に、東京行きを計画していたが、こちらも断念した。
 だがそれでも「誰一人として、日本に行きたくない、五輪に出たくないという選手はいません」と藤山さん。それほど、選手にとって五輪は特別な大会なのだという。
 23日夜にあった開会式。日本語の50音順で行われた選手団の入場行進で、「さ」行のソロモン諸島選手団は午後9時40分過ぎに登場した。↵
南太平洋の島々がつないだ縁
 記者にメールを提供してくれたのは、一般社団法人「太平洋協会」(東京都港区)の小川和美・前太平洋諸島研究所長(61)だ。きっかけは、ソロモンと同じ太平洋に浮かぶ島国・ナウルに関する取材だった。
 藤山さんが選手団長に抜てきされたと聞いた小川さんは「在日のソロモン関係者で藤山さん、選手たちを盛大に迎えようと考えたのです」。だが、コロナ禍で無念にも直接の面会ができなくなった。「それでは」と6月22日、関係者でツイッターのアカウント「ソロモン2020応援団」(@gosologo2020)を立ち上げた。出場する3選手の練習風景や壮行会の様子などを紹介し、応援している。
 7月21日現在のフォロワーは450人超と少しずつ増えつつあるが、ナウル共和国政府観光局の22万人超には遠く及ばない。応援団は「フォロー大歓迎です。ソロモンの魅力も一緒に伝えます」と呼びかけている。

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