瓦の数を記録しながら外観図を作成する=三重県名張市新町で2021年5月16日午前11時49分、久木田照子撮影
幕末の安政伊賀地震(1854年、マグニチュードは推定7・2)の痕跡があるとみて、近畿大工業高等専門学校(三重県名張市春日丘7)の田中和幸准教授(建築史)の研究室が調査を始めた名張市新町の町家。この地震による同市の被害の記録は少なく、研究室は町家を「災害と復旧の過程を伝える貴重な『震災遺構』」と位置づけ、学生が調査に取り組んでいる。主屋の図面を作成し、調査結果を論文にまとめる予定。【久木田照子】
学生4人が5月16日、旧市街地(旧町)に建つ町家で現地調査を始めた。田中准教授が、災害の痕跡から築造時期を江戸時代と推測した経緯を説明し、「見る人に建物の情報が伝わる図面を作って」と呼びかけた。また、ここで工務店を営む野山直人さん(36)が別の住宅の図面を学生に見せ、作成時のポイントを助言した。
断面図を作るために主屋1階を計測する学生=三重県名張市新町で2021年5月16日午前11時37分、久木田照子撮影
調査では、大地震で柱から外れたとみられる梁や傾いたままの壁と、その後の改修の状態を観察し、室内の広さや高さなどを測った。5年の西村美月さん(19)は「災害で傷んだ建物はすぐに壊されると思っていた。使われ続けた状況を目の当たりにした」と感嘆した。5年の土井康弘さん(19)も、「時代を超えて災害の跡が残っている。空き家が社会問題になっているが、この町家を通して、壊さずに活用できることを発信できたら」と意欲を示した。
主屋2階を計測する学生=三重県名張市新町で2021年5月16日午前11時7分、久木田照子撮影
調査を受け入れた野山さんは「かつての町家の使われ方や人々の暮らし、町並みにも思いをはせ、まちづくりにつなげてほしい」と期待している。
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