この記事で紹介する場面写真は、俊夫が自動車教習所で旗に隠れながら、妻・佐和子を見つめるカットのほか、スマホのカメラ越しに佐和子を探す姿、佐和子からの連絡に慌てて階段を降りてくる姿など、いずれも慌てふためく姿をとらえたもの。
劇中で佐和子が新たに描き始めた現実そっくりの不倫漫画を読み、自分自身も佐和子の担当編集者・千佳と不倫しながら、佐和子の不倫を疑い、不安になり、ついには佐和子が教習を受ける自動車教習所にのり込んでしまう俊夫。のり込んだはいいものの、声をかけることはできず、旗に隠れながら、また、スマホのカメラで佐和子の乗る教習車を探すなど、佐和子の様子を伺うその姿は、情けないのにかわいくも見えてしまう、まるで漫画の1コマのよう。家で佐和子を待ちながら、電話が鳴って慌てて降りてくるその姿もどこか憎めない俊夫のキャラクターがよく出ている。
堀江貴大監督は俊夫の演出について、「俊夫に関しては、苦しめば苦しむほど、滑稽な雰囲気になって欲しいと思っていました。本人的にはシリアスな状況になっているのに、傍から見るとその姿が面白みがあるように見せたい、と撮影前に柄本さんと話しました」と明かす。
そんな監督の俊夫像を見事に演じた柄本のどこかコミカルで憎めない、かわいらしさすら感じてしまう俊夫の姿から、本作が単なるドロドロの不倫映画ではなく、どこかクスッと笑ってしまうコミカルさが魅力の一つであることがうかがえる。
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