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 「東京五輪・柔道女子78キロ超級・決勝」(30日、日本武道館)
 女子78キロ超級で初出場の素根輝(21)=パーク24=が決勝でイダリス・オルティス(キューバ)を破り、金メダルを獲得した。この階級では2004年アテネ大会の塚田真希以来、4大会ぶりの頂点。日本女子は7階級で金4、銀1、銅1と計6個のメダルを獲得し、男女合わせて金メダル9個(男子5、女子4)は過去最多となった。
 高校3年間、学校では泣いた姿を見せたことがなかった素根が、初めて涙を流したのが卒業式の日だった。「同級生が病気で倒れて苦しんでる姿を見てきたので、それを思い出して…」。3年間担任だった執行理恵さん(41)は「勝負師としては大丈夫か?と心配になるくらい、素根は誰に対しても優しい子だった」と明かす。
 同級生の井口美紗さんは1年生の2月、脳出血で突然倒れた。後遺症で左半身がマヒしたが、懸命のリハビリで左足首以外は動かせるようになり、半年後には学校に復帰。大好きだったソフトボールはできなくなったものの、そこからは障がい者水泳に挑戦し、東京パラリンピックを目指していた。
 執行さんは「素根が五輪に、井口がパラに出られたらいいね」と青写真を描き、素根も井口さんの姿に刺激を受けた。困難を乗り越えた同級生が、卒業証書を受け取る姿に胸を打たれて、それまで見せたことのない涙をこぼした。
 全日本柔道王者で元プロレスラーの坂口征二も輩出した南筑高で、素根は「スポーツキャリアクラス」の1期生として入学。実は、地元で五輪を目指している素根のために前任校長だった大山明さんが教育委員会に働きかけて開設した“素根シフト”の学級だった。週に3日は5、6限の授業時間に部活動を行うことができ、大会や合宿のときは全て公休。学校を挙げて、海外遠征や合宿も多い素根をサポートした。
 素根もそれに応えた。「好きじゃない」という学業にも地道に取り組み、クラスで課されていた宿題、南筑の頭文字をとった「Nノート」は毎日提出。合宿や遠征で登校できない日も欠かさずやってきたといい、執行さんは「お勉強ができるわけではないけど、やることは120%やってきた」と感心した様子で振り返った。
 東京パラリンピックを目指した同級生は、懸命に努力を重ねたが、入った障がいクラスの基準となるタイムを切れずに引退。現在はパティシエを目指し、新たな道を進み出した。執行さんは「井口の分も輝には頑張ってほしい」と期待を込めていた。恩師に、友達に、大舞台で一番輝く姿を見せた。続きを見る

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