あの瞬間の色は

あの瞬間の色は……。本の向こうから、風が吹いてくる | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]


『モロカイ島の日々 サンダルウッドの丘の家より』
山崎さんは、人口7000人ほどのハワイの小島・モロカイ島に、心理学者のご主人と2人の娘さんと暮らしています。『モロカイ島の日々』では、東京に住んでいた山崎さんが導かれるようにモロカイ島に渡り、その後10年間サンダルウッドの丘で家族とともに暮らしたいとおしい日々が、島に映し出される色彩の描写とともにつづられています。
ゆるやかな午後。海と空はひとつ色となり、コハラ(鯨)たちのかるくここちよい、きゅるきゅるという声さえもその色に溶け、音と色とがひとつになるミラクル。
わたしたちの住まう、緑の星の息づかい。そのリズムとミュージックの中に溶け込んで、わたしたちは今、生きている。(略)風景と音楽は、ひとつに溶け合う。数え切れない光が混ざりあい、ふわふわであたたかい、やさしい羽毛の色になる。そう、それは、祝福に満ち満たされた、ひだまりの色。満杯に。
開催にあたり、山崎さんからこんな言葉が届きました。「一瞬一瞬、奇跡のように美しい風景、宝物のような瞬間。それは私にとってはたまたまモロカイ島であったが、必ずしもモロカイ島でなければならないということではなく、その人それぞれの宝物・大切な瞬間を見つめてほしい」
『モロカイ島の日々 サンダルウッドの丘の家より』山崎美弥子 著 リトルモア 1,800円+税
私は、小さな作品展を通してこの言葉を受けとめると同時に、『モロカイ島の日々』を読むことで、この言葉の意味をより深く理解できたように感じています。
この一冊では、山崎さんが体験した「一瞬一瞬、奇跡のように美しい風景、宝物のような瞬間」にまつわるいくつものエピソードが紹介されています。偶然と必然が重なり合うように、はからずも会うべき時に会うべくして出会った先住民の血をひく島人たち、手つかずの自然が見せてくれる美しい景色、アロハ(愛)とともにゆっくりと流れる時間、船上生活をしている時に幾度となく見つめた水平線……。
それらは、まるでモロカイ島からのギフトを受け取るかのようにおとずれ、そして山崎さんは子どもの頃に見た千年後の未来の風景を追い求めるように、海と空の絵を、海と空の境界線を、描き続けます。
千年後の未来は、その実、千年前の過去なのかもしれない。そしてそれは、今という瞬間の中にあるのかもしれない。(略)千年後の未来の風景によく似た、この島の海と空の絵を、わたしはカンバスに描いています。それは、「条件の無い場所―あたたかいところ。」
昨年、時を同じくして、山崎さんがモロカイ島での一瞬一瞬を切り取った作品集『ゴールドはパープルを愛してる』が出版されました。ページをめくりながら私は、画集から映し出される光景に、不思議と自分がいまそこにいるかのように、その時に心地よく吹いていたであろう風を想像していました。
本を読んだ後に作品を改めて見ると、心が静寂へと導かれ感覚が研ぎ澄まされていくのを感じずにはいられません。そして思うのです。一瞬で心惹かれる作品や心に刻まれる本との出会いもまた、その人にとって大切な瞬間、宝物なのかもしれないと……。
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