東京２０２０＋１の主役へ―挑む長野県勢①　バドミントン女子・奥原希望 | 信毎web

　初出場で銅メダルを獲得した２０１６年リオデジャネイロ五輪までは無我夢中だった。小学１年でバドミントンを始め、父圭永さん（６２）の熱血指導、強豪の埼玉・大宮東高への進学…。豊富な運動量を生かした鉄壁の守備で頭角を現し、全日本総合選手権など次々とタイトルを獲得し、リオ五輪でも表彰台に立った。
　ところが、その舞台で限界を感じた。準決勝で銀メダリストのシンドゥ・プサルラ（インド）に完敗。「自分の力を出し切れずに終わってしまった。納得できない」。
　翌年には世界選手権を制覇したが、その頃から新たな道を模索していた。当時はほかの日本代表と同じく実業団に所属。だが、海外遠征など年間２５０日近くに及ぶ代表活動に加え、国内のリーグ戦も戦わなければならない。過酷なスケジュールの代償として、選手生命を脅かしかねないけがを何度も経験した。
　いかに負担を減らし、世界トップの実力を身に付けるか。「東京五輪のために全ての準備をしたい」。その結論が、バドミントン界では異例とも言えるプロ転向だった。
　１８年末に所属企業を退社し、１９年に活動をスタートさせると国際大会に専念。さらにリオ五輪で代表コーチとして指導を受けた佐藤翔治コーチ（ＮＴＴ東日本）と再びタッグを組み、プレーを根本から見直した。
　新型コロナ禍で国際大会がない期間を利用し、世界トップレベルだったフットワークを強化した。「目の前の一球一球をいかに大切にできるか」。守備を土台にしつつも、洗練された動きで次々と攻撃的な球を返し、相手に重圧をかける。今年３月の全英オープンで５年ぶり２度目の優勝を果たし、世界ランキング３位で決戦に乗り込む。
　プロ活動の一環としてＳＮＳ（会員制交流サイト）で積極的にメッセージを発信し、コロナ禍に苦しむファンや目標を失った中高生を励まし続けてきた。「ファンにプレーを見てもらう機会は減ったけれど、心でつながっている実感がある」。開催の意義が問われる東京大会。強靱（きょうじん）な克己心で磨き上げたプレーは見る者の心に何を刻み込むだろうか。
〈おくはら・のぞみ〉大町市仁科台中から埼玉・大宮東高に進み、２０１１年の全日本総合選手権を大会最年少１６歳８カ月で制覇。その後は国際大会で優勝を積み上げ、初出場した１６年リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得し、１７年世界選手権で初優勝した。１９年にプロに転向し、同年に世界ランキング１位にも立った。今年３月に全英オープンで５年ぶり２度目の優勝を果たした。日本ウェルネススポーツ大出。１５６センチ、５２キロ。２６歳。大町市出身。
３月の全英オープン女子シングルスで２度目の優勝を果たした奥原希望

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