冬の時代から13年ぶりの五輪　世界との距離を縮めた男子バレー

　東京オリンピックは第12日の3日、バレーボール男子の準々決勝が行われ、日本は連覇を狙う世界ランキング1位のブラジルに0―3で敗れた。1976年モントリオール五輪以来、45年ぶりの4強入りはならなかった。
　13年ぶりに五輪の舞台に戻ってきたバレー日本男子の戦いは、メダルマッチの手前で幕を閉じた。それでも長い冬の時代を思い返せば、真夏の熱い戦いぶりは想像以上だった。1次リーグで3勝を挙げた上、世界のバレー界をけん引するブラジルに必死で食らいつき、一定の結果を残すことができた。
　この5年で世界との距離は確実に縮まった。ミスを恐れずにサーブで攻める。中央からのクイックとバックアタックを絡め、常に4枚の攻撃の選択肢を作るという世界のトレンドがチームに浸透。25歳の石川祐希（ミラノ）、21歳の西田有志（ジェイテクト）らも順調に成長した。2019年のワールドカップでは28年ぶりの4位に入るなど結果を残し、五輪では29年ぶりに8強入りした。
　最大の立役者は、17年に就任したフランス人のフィリップ・ブラン・コーチ（61）だ。現役時代は世界選手権のMVPを獲得する名選手で、指導者としてもフランス代表監督やポーランド代表コーチなどを歴任。中垣内祐一監督（53）から選手起用や戦術など全権を託され、選手たちの意識を変えてきた。パスの質やスパイカーが開く位置など細部にもこだわりつつ、「ファイティングスピリッツ」と繰り返して熱い気持ちも大事にする。主将の石川を中心に得点を決める度に絶叫し、闘志を前面に出すスタイルは、無観客開催の中でも、チームの雰囲気をプラスに変えた。
　中垣内監督らが出場した92年バルセロナ五輪は若手が多く、その後の飛躍も期待されたが、96年アトランタ五輪は予選落ち。以降、五輪出場は1次リーグ全敗だった08年北京五輪のみと苦境が続いた。この5年で作った流れをいかに継続し、発展させるか。中垣内監督は「選手たちは次の五輪でもっと上を目指せると感じていると思う」と語った。そのために不可欠なのは「個」のレベルアップだ。世界のトップリーグでプレーする石川に続くような選手が次々と生まれてこなければ、本当の勝負はできない。【小林悠太】

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