橋本大輝と北園丈琉が開く体操新時代　異なるタイプ、競い高め合う

　2人の成長が「体操ニッポン」の新たな時代の到来を予感させた。
　東京オリンピックという同じ舞台を戦った2人だが、その歩みは対照的だ。3歳から競技を始めた北園はジュニア時代から活躍し、その美しい演技から「内村2世」の呼び声もあった。2013年9月に東京五輪の招致が決まった時から「東京で金メダル」を目標に掲げてきた。
男子個人総合決勝で優勝した橋本大輝（手前）と抱き合う北園丈琉＝有明体操競技場で2021年7月28日、久保玲撮影
　一方、橋本はその時のことをほとんど覚えていない。「五輪に出るなんて夢のまた夢」だったからだ。その後も中学まではけがが多く、成績を残せなかった。1学年下だったが、早くから注目を集める北園の姿はまぶしく映った。「こういう選手が五輪に出るんだな」と思った。地元の廃校になった小学校の体育館で地道に練習を重ねた。
　2人の歩みが本格的に交わったのは高校生になってからのことだ。18年5月のユース五輪の代表選考会で、最終種目の鉄棒で落下するなど3位に終わった橋本に対し、北園は2位と僅差で優勝を勝ち取り、チャンスをつかんだ。北園はユース五輪で個人総合など5冠に輝き、脚光を集めた。
　しかし、橋本はこの時の悔しさを忘れず、翌19年に大きな飛躍を遂げる。世界選手権で高校生ながら代表入りを果たし、団体総合の銅メダルに貢献した。当時、翌年に迫っていた東京五輪に向けて2人が比べられることも増えた。北園が橋本について「僕にとって刺激になる。強くなるために必要な存在」と言えば、橋本も「2人で強くなって、日本代表に必要不可欠な選手になりたい」と話した。
男子団体決勝の演技を終えた（右から）橋本大輝、北園丈琉、谷川航、萱和磨。優勝は3年後のパリ五輪に持ち越された＝有明体操競技場で2021年7月26日、宮間俊樹撮影
　橋本は身長166センチと体操界では大柄で、長い手足を生かした演技は雄大さがある。156センチの北園の演技は力強さや動きにキレがある。タイプの異なる2人で競い合うからこそ、自分の良さも課題も見えてくる。
　共通するのは「世界で勝つ」との強い思いだ。しかし、初めて出場した26日の団体総合は銀メダルで2連覇を逃した。橋本は個人総合で優勝後、「団体のみんなで上りたかった」とつぶやいた。そしてその姿を見て、北園は悔しさを胸に誓った。「これからの日本は大輝くんと僕が引っ張っていく。負けてられないし、負けたくない」
　3日、鉄棒の種目別決勝で2人は再びライバルとして相まみえる。【円谷美晶】

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