熱海市、南北に「分断」　土石流で国道埋まる　通院、通学が困難に

　「病院で2回目のワクチンを打たなければいけないんだけど、歩いてはいけないと聞いたし、早く道が開いてくれればいいんだけど」。6日午前、現場北側に住む無職の沢渡清（きよし）さん（83）は、市中心部がある南側へ行けない不安を口にした。
　現場付近は山が海岸にまでせり出す地形になっており、土石流の発生によって南北を結ぶ道が途絶えた。北側から市の中心部へ向かおうとすると、山側を大きく迂回（うかい）するしかない。
　南北の分断は医療サービスの提供に深刻な影を落とす。市北部の住民が市南部の病院や薬局に行けなくなり、処方薬の入手に手間取るケースも市に報告されている。比較的損傷が少なく、緊急車両のみ通行可能な熱海海岸自動車道（熱海ビーチライン）や、JR東海道線を経由し、薬局から患者宅へ処方薬を輸送したりしているという。また、市内には人工透析が可能な病院が3カ所あるが、「いずれも市南部に集中している」（市健康づくり課）ため、北側の患者は神奈川県小田原市など遠隔地へ出向かざるを得なくなっている。
土石流で分断された国道135号
　現場では断水が続いており、荒木道夫さん（73）は「道路が通らないと物流が入ってこない。このまま続けば食料が尽きてしまうのではないか」と心配する。
　子どもたちへの影響も大きい。北側には市立伊豆山小学校（児童数54人）、南側には市立熱海中学校（生徒数284人）がある。ともに土石流発生地域をまたいで校区が広がるため、「南側からは伊豆山小に近づけず、北側からは熱海中にも通えない」（熱海市教育委員会）状況で、避難所にいる多くの子どもが通学困難になっている。
　市立小中学校は6日も全校が休校となった。市教委は「今後は災害関連の警報の発令状況を見ながら再開時期を決める」としている。【太田圭介、深野麟之介、木下翔太郎、金子昇太】

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