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 解禁された90秒予告は、愛車であるサーブを走らせる家福とその助手席に乗る音の一見穏やかなシーンから始まる。「今晩帰ったら少し話せる?」と音が、胸に秘めた想いを打ち明けようとしている様子が映し出される一方で、「奥様にはいつもお世話になっています」と音と親密そうな気配を漂わせる俳優の高槻(岡田将生)を家福が笑顔で迎え入れるシーンが続く。しかし、幸せそうな日々から一転、音は突然この世を去ってしまう。
 その後、広島の演劇祭で演出を手掛けることになった家福。「すごくいいドライバーです」と紹介される寡黙なドライバーみさきとの出会いや、演劇のオーディションで再会する高槻などが映し出されていく。
 「音が死んだ日、もし少しでも早く帰っていたら…」。みさきや高槻との時間を経て、妻の音から聴くことができなかった秘密や喪失と向き合うことになる家福。「ごまかさないでください」と言い放つ高槻、「嘘を言っているようには聞こえませんでした。それが真実かどうかは分からないけど」と家福の愛車の中で語るみさきなど、印象的な言葉が続き、その後展開される重厚な人間ドラマが見え隠れする。
 後半には、「舞台上での銃声」「カセットテープ」「ミラー越しのみさき」などの印象的なショットが連なり、家福が辿る葛藤と波乱の運命を予期させる。これまで、豊かな映画的表現で、人間がもつ多面性や複雑な感情をあぶりだしてきた濱口竜介監督。その一端が垣間見える映像に、カンヌでの反応も期待が高まる予告編映像となっている。
 濱口監督の作品がカンヌ国際映画祭コンペ部門に出品されるのは、商業長編デビュー作『寝ても覚めても』(18年)に続き、2作目。これまでに、『第71回ベルリン国際映画祭』で短編集『偶然と想像』(21年)が銀熊賞受賞。脚本を手掛けた黒沢清監督作『スパイの妻』(20年)が『第77回ヴェネチア国際映画祭』銀獅子賞を受賞し、世界三大映画祭でその名を広め、大きな注目を集めている。
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