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 そんな中、ファミリーマートは、11日にコインランドリー併設店を京都に初出店し、全国26店舗に。プライベートブランドのアパレルや100円グッズを展開するほか、全国各所でこども食堂や高齢者向けのサークルも開催している。セブン-イレブンは、一部店舗ビルにて保育園を運営。移動販売車対象エリアも年々拡大しており、現在全国107台が稼働中だ。
 業界大手三羽ガラスの一つ、ローソンも独自の道へ歩み出す。その一つが『LAWSONマチの本屋さん』。昨今は街の書店が次々と姿を消し、書店がない自治体は400以上とも言われている。その減少率は、10年間で4000店舗。さらに、コロナ禍の巣ごもり需要で電子コミックが急成長を遂げ、活字とのふれあい方も変わってきた。
「とはいえ、紙媒体の需要がなくなる訳ではないし、触れ合う機会もなくしてはいけない。そこで、お客様の一番近い場所にあるだろうコンビニが、街の書店の代替になればと考えたのです」(同社担当・平野彰宏さん/以下同)
 書店だけでは収益が出ず、立ち行かない。では、その書店が集客力のあるコンビニ内にあったらどうか。「街を幸せにします」が企業理念のローソンらしい考えだが、もちろんそこには戦略もある。販売している商品で差別化を図るのが難しいのであれば、書籍が充実していたら、他店を飛び越えてローソンに来てくれる人もいるのではないか、というねらいだ。
■書店併設で客層に変化 地域のニーズに合わせた女性やシニア向け、ご当地コーナーも
 通常のコンビニの本の種類は、1000タイトル未満。約9000タイトル揃える書店併設店では、どのように選定しているのだろうか。「狭山南入曽店の場合、そのうち6000タイトルがコミックです。通常のコンビニでは置いておらず、販売上位なのは児童書やロングセラーの絵本。幹線沿いの店舗で、これまではドライバーや営業の方が多かったのですが、30~40代のお母様世代にご来店いただくようになりました」
 そのほか、遠くまで行けない、ネットが得意でないというシニア客向けに時代小説も販売。また、自衛隊基地裏に立地していることから、自衛隊の写真集も。これが同店の販売ランキング上位になっており、地域性も生かしている。さらには、隣町の飯能市が舞台のコミック『ヤマノススメ』も陳列。作者のサインも飾るなど、ご当地コーナーも設けている。
「ただの売れ筋だけになっては意味がありません。競争が激しい今、重要なのは“店舗に訪れるワクワク感”。それを創出するために日本出版販売会社さんと提携し、プロのラウンダーが各店舗でその土地ごとのマーケティングと指導をしてくれています。弊社の店舗スタッフも、書籍に関してはプロではありませんので、そこで売上・発注を教わっているのです」
 コンビニの店舗に書店スペースを設けるパターンもあれば、もともとある書店にコンビニを併設するパターンも視野に。協力する書店側は、コンビニの集客力を得られる上に、少ない坪数で行うため、スタッフの人数=人件費も抑えられるのだ。「書店のない自治体にも出店したい。まずは3年後に、全国100店舗を目標にしています」と平野さんは前を見た。
■“コンビニは体に悪い”を逆手に取った高齢者向けサービス強化 地域コミュニティの場に
「これまで我々のメインターゲットだったビジネスマンは、今後どんどん減少していきます。2025年には65歳以上が3700万人と言われるこの世の中で、要介護認定者に合わせた商品展開や介護関連サービス、人とのつながりにもに力を入れようと。これまでの“物売り一辺倒“から、”ローソンに行く用事がある”を目指すモデルです」(同社担当・金子大作さん/以下同)
 そうして2015年に立ち上げた『ケアローソン』では、介護相談窓口(介護事業者が運営)、サロンスペース(コミュニティカフェ)併設、200種ほどシニア・家族のニーズに配慮した品揃えをするほか、介護関連商品(栄養補助食、やわらか食。匂い対策の洗剤、おむつ、杖など)も販売。これがドラッグストアのない地域で売上を伸ばしている。「元気なアクティブシニアに向けては和洋菓子、納豆、豆腐などにも力を入れています。高齢者に元気でいてもらうことが医療費削減、介護予算削減にもつながるという信念です」
 現在は近畿7店、広島6店、関東6店、愛知1店、九州、甲信越、東北各1店で展開。これまでの一律マニュアル、一斉拡大というやり方ではなく、あくまで協力的なオーナーやパートナーとなる介護事業者、自治体や地域の特性を見極めながら、慎重に店舗拡大を図っている。
 その理由は、ねらいの1つにコミュニティ形成があるからだ。近所付き合いが希薄な今、街で孤立していたシニア層が繋がり、些細な事でも相談できる場の提供にもなっているという。何かあった時に助け合える仲間づくりや、定期的に専門家が顔を合わせることで、認知症早期発見にもつながる。通常、コンビニは長居できる場ではないが、ケアローソンでは介護施設にあるような高齢者でも座りやすい椅子を設置している。金子さんはむしろ、「無料で気軽に長居してほしい」と話す。
 そのほか、地域の医師や理学療法士などが開く座談会もあり、運動、無料健康測定イベント、文化交流(ペーパークラフト、絵画サークル、保育園と連携した家族の似顔絵展示会)などで、「ローソンへ行く」を誘導している。
「また、ワクチン予約などデジタルに弱いシニアのために、愛知県名古屋市の南区芝町店では、市と連携して大学生のボランティアが無料相談サービスなどを行いました。(6月末で終了)弊社としては誰1人として取り残さないような社会を実現したい。実際にシニアのご来店が増え、イベントも盛況。モノ+コト=通いの場として活用してもらえれば」
 そんなローソンだが、このコロナ禍でオフィス・観光地・繁華街の通常の店舗は苦戦。住宅街の店舗では「身近なコンビニで買い物を済ませたい」という期待に応えられる、冷凍食品、生鮮野菜、日常品の品揃えを強化している。また、従来の全国一律の店づくりからその地域に合わせた最適化を目指しており、現在約492店舗で改装を。できたて商品へのニーズの高まりで、店内キッチンで調理を行う「まちかど厨房」の導入店舗も拡大する予定だ。
 ローソンをはじめ、コンビニ各社は今、社会問題と向き合いながらの改革が進みつつある。これまでは全国どこに行っても変わらない商品やサービスを得られることが求められていたが、これからは“一番近いコンビニ”よりも、“行きたい理由があるコンビニ”が選ばれる時代に突入しているのかもしれない。その理由をどれだけ提供できるかに、“社運”ではなく、“店舗ごとの運命”が懸かっている。
(文=衣輪晋一)

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