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課題1. 経営計画が書けない
 File2では、中小企業の課題を、資金調達面から考えてみます。もし、資金調達の目的が運転資金の確保なら、融資で十分に対応できると思います。でももし、新しい事業戦略のために成長資金を得ようと思ったら、本来は、①オーナー経営から脱皮し資本戦略を導入するか、②適切な補助金を探すか、③成長戦略自体を諦めるか、そのいずれかを選ぶのではないでしょうか。しかし、現実には、これまでの大半の中小企業にとって、「成長」とは、取引先からの発注を増やしてもらうことであって、①はもとより、②も少数派です。このため、資金調達面でも、頑張って銀行の融資から補助金どまり。他人の資本の世話にはなる、という発想はほとんど無かったかもしれません。
 それでも、多くの中小企業が、これまで元気よく生き残ってこられたのは、昭和の高度成長期を象徴する、長期的な系列的取引関係(若しくは、既存のサプライチェーン)の中で、安定的な受注を得ることに成功してきたからではないかと思います。もちろん、各企業の必死の努力があっての話ですが。確かに、人口増加期には、国内市場のパイ全体が増えます。ですから、未来を考える余裕もないまま、現在をひた走る中小企業でも、何らかの「成長」を実感することは出来たと思うし、資本政策も不要でした。しかし、これからは人口減少局面に入り、国内市場のパイ自体が減っていく難しい局面に入ります。自ずと、各企業にとっても、平均的、確率的に見れば、取引先からの受注は減っていくはずです。経営者の高齢化とも相まって、無策のままでは、コロナの影響があってもなくても、目の前の市場は徐々に尻すぼんでいくことになるのではないでしょうか。いつもの取引先から少しでも多くの受注をとってくる。そういう次元を超えた新たな成長戦略が、今、多くの中小企業にとって必要とされていると感じています。
 そこで必要となるのが経営計画です。確かに、今まで頻繁にやりとりしてきた人たちが相手であれば、別に書き物はいりません。しかし、新しい取引先を開拓する、新しい人たちと連携する。そうなってくると、どうしても、自分が持っているもの、自分がやろうとしていること、戦略的に目指しているものを、言葉にして説明する必要が生じます。
 経営計画を文字にしたことがない中小企業は、中小企業全体で3割、小規模事業者では約半数に上るという調査結果があります。また、経営計画を作ったことがあると答えた事業者の中でも、経営者の方自身が積極的にコミットし作成したものは、実は少ないのかもしれません。これまで、多くの中小企業にとって、事業内容や経営戦略を文字にしてみる機会も、それを必要とする場面も少なかったのではないか。まれに、それを書く作業が必要となった時には、周囲の経営指導員やコンサルに丸投げするケースも多かったのではないか。そう感じています。
 地方に行くとよく、その魅力について、「食べればわかる、来ればわかる。使えばわかる」であるとか、「是非、現場にお越しください」などと言われることがあります。しかし、それでは、食べたことが無い人、来たことが無い人、使ったことがない人には、自分達の作っている製品や、持っている技術、展開しているサービスの素晴らしさは伝わりません。それらを敢えて積極的に言語化し、まだ来たことの無い人、見たこと無い人、使ったこと無い人に、言葉でアピールすることが必要です。しかし、我が国の中小企業は、おそらく、「腕は立つが、筆は立たない」のが厳しいながら現実ではないかと思います。
課題2. 経営支援機関の二極化
 つまり、業態による優勝劣敗が、かなりはっきり出てきてしまっている。コロナ禍は、単にコロナによる需要減少・消滅というばかりでなく、人口減少局面により実は既に始まっていた市場の構造変化と選別を、一部業態において前倒し加速させたという面があるのではないでしょうか。
 そこで考えなくてはいけないのが、事業の再構築です。先ほども見たとおり、事業再構築に取り組むとなると、経営の言語化・抽象化が不可欠となります。今回の事業再構築補助金は、事業規模の大きさもあり、これまで政府の支援に馴染みが薄かった事業者にもご利用いただける内容となっています。その結果、実は今回の事業再構築補助金への申請が、経営戦略を初めて本格的に筆をとって書いてみる機会となった企業も少なかったのではないか。そう感じています。また、今回の事業再構築補助制度では、経営支援のプロの方々に必ずご相談してから申請していたくことをルールとしました。その結果、第一次申請の内容を見ている限り、経営者と経営支援の専門家の良いチームがたくさん生まれたのではないかと感じています。まさに今回は、言語化に不慣れな経営者の方々が、良きパートナーを見つける大変良い機会になったのではないでしょうか。
 ただし残念ながら、申請書に付された事業計画の質が非常に高いかというと、そう高いとは言い切れない面があります。このため、動画解説をだしてみました(※)が、こうしたシンプルな解説が必要になるくらい、まだまだ、経営計画づくりは、多くの中小企業にとって、暗中模索、という状況のように感じました。
※)https://www.youtube.com/watch?v=uaIyctwmZno&feature=youtu.be 図も併せて参照
 こうなってくると、経営者ばかりでなく、経営支援の専門家にも頑張ってもらわなくてはいけません。今回、補助金の申請に当たって「二割の成功報酬」をうたい文句にするという大変由々しき宣伝活動が、一部に見られました。でも、補助金に採択されることは、決してあるべき「成功」ではありません。補助事業に取り組み、その結果、事業の再構築が成功して初めて、「成功」と呼ぶべきでしょう。まだまだ、補助金に採択されることが「成功」だと思う方も少なくないようですが、そういう体質が経営支援の専門家の皆さんの中に残っているのだとすれば、まずはその体質から変えていく必要があります。成功報酬は、補助事業の採択決定ではなく、事業の再構築の成功からとってほしいものだと思います。
 ただ、私が申し上げたい問題はそこではありません。経営支援サービスが二極化している疑いがある。それが、ここで、問題提起したい話題であります。
 政府が提供する経営支援事業の多くは、無償支援をベースにしています。たとえば、よろず支援拠点の経営相談も無料ですし、商工会議所や商工会の経営指導員の皆さんも、原則無償でお仕事をしていただいています。こうした経営相談では、公的な無償支援サービスであるだけに、コンプライアンスの観点から、特定の民間人材サービスや技術紹介サービス、特定の投資家などを紹介しにくいのが正直なところです。その結果、無償支援で完結できる相談支援に、その相談対応もとどまる傾向がある。自然、頼る経営者からのリクエストも、無償支援ですむ内容に流れやすくなっているのが、どうやら実態のようです。こうした施策の多くでは、相談件数自体をKPIとしていることが多いのですが、無料相談のまま相談件数の増加を目指すと、支援機関の方も、膨大な数がいる無償支援を求める企業のロングテールを、奥へ奥へと突き進んでしまう恐れがあります。無料相談の奥は、実は深くて広い。
 他方で、中には、年収2000万円をたたき出す優秀な経営診断士などの方ももちろんいらっしゃいます。しかし、こちらは、顧客となる経営者も優れた経営支援の専門家も、優良な相手をみつけたということで、互いを囲い込み合ってしまう傾向があります。その結果、市場には、質の高い経営支援サービスがなかなか供給されない。このように、今、経営支援サービスの二極化が進んでいるのではないかと考えています。
 こうした二極化のために、実は、その両翼の真ん中にいる多くの中小企業にとって、優れた経営相談の相手を、現実的に支払えるコストの範囲で見つけることが非常に難しくなっているのではないか、そう感じています。逆に言えば、これまでが、経営に言語化が求められる局面も少なく、そうした方に出会う必要が無かったということなのかもしれません。
 公的な支援施策としては、人材紹介、海外展開、技術開発、事業承継、M&Aなど、実に様々な角度からメニューが提供されています。しかし、やはり公的支援の世界は、現状、有償サービスの領域につっこんででも、最後まで伴走しきることが、なかなか難しい面があります。このため、結果として、成約・成功するまでは支援しきれない、入り口止まりの施策メニューを多数取りそろえている、ということになっている可能性があるのではないでしょうか。
 もちろん、公的支援の先の工程は企業の自助努力があるべき領域があるのは事実です。でも大切なのは結果です。結果が出ているかどうかにこだわわりきれず、ステレオタイプな官民役割分担論からくる、伴走しきることに対する諦めの早さが、多くの中小企業を同じステージを繰り返し行ったり来たりする構図を助長している可能性がある。自分は、そんな疑いを持っています。
 ではどうすれば、必要に応じ最後まで伴走してくれる優良なサービスを、より多くの中小企業に紹介できるのか。国の支援と、その後を引き継ぐ有為な民間経営支援の専門家とを、どう接続するれば、問題なく、多くの中小企業の成長の結果を引き上げていくことが出来るのか。この問題を解くためには、この経営支援サービスの有償と無償の垣根問題を解決するべく、コンプライアンスルール自体にイノベーションを起こし、無償サービス/有償サービスの連携を充実させることが必要ではないかと、この一年間を通じて、非常に強く感じています。
課題3. 情報不足と、その非対称性
 もう一つ、大切な問題提起をしたいと思います。それは、情報不足問題です。
 今、実は、こうした中小企業支援市場に、新たな参入、若しくは活性化の流れが来ているのではないかと感じています。第一に、財務会計などの面からアプローチする新たなベンチャー企業(Fintechベンチャーが多いかもしません)、②改めて経営者への伴走強化を試みる地域金融機関、③有望案件の発掘に興味を示しているPEはじめGrowth Capital holderなどです。ただし、こうしたプレーヤー全員に共通する悩みがあります。それは中小企業に関する情報不足。少なくとも、自分のお客さん以外の情報は、ほぼ全くないに近い。ということです。これでは競争を通じた良い市場開拓はなかなか進みません。
 実際、中小企業の場合、各事業者の基本的な法人属性情報すら、第三者には検索・把握が難しいのが実情です。企業にホームページがあれば、正直良い方で、仮にあっても、そのホームページに上がっている住所や代表者名すら、古くて信用できないケースが多いのではないでしょうか。これまでの中小企業には、他人の資本に頼る習慣がなかったため、情報を開示するという考え方がありませんでした。インターネットの普及にもかかわらず、経営者の頭の中と経営に対する意識は、それ以前の時代にとどまっているのが実態です。前回書かせていただいたように、企業政策から市場政策へ舵を切るということを意識した場合、これがある意味、中小企業の経営を巡る最大の課題なのかもしれません。
 この点、中小企業庁の施策には、一年稼働すれば10万件程度の企業情報が集まるという特徴があります。加えて、昨今、EBPMの強化の流れの中で、補助事業等のその後の事業動向に関するデータも急速に蓄積しつつあります。ところが、現状、その多くは、アナログのまま死蔵されているのが実態です。こうした官の保有する情報をどうやって、市場政策の新たな流れに活用するかが問われているのではないか。これからは、補助金などの資金だけでなく、官が保有する情報を積極的に民に提供し、実際に活用してもらう時代に入るっていくのではないのか。そう考え、今、中小企業庁では、徹底した電子化と業務のDXを進めようとしています。例えば、中小企業庁の補助金は、自治体連携型をのぞいてすべて、来年度には完全に電子申請化されます。またその結果デジタル化される申請内容からその後のフォローアップデータまで、全てAPI連携を活用することにより、自由に共有できるDX基盤を、本年度開発することとしております。
 もう一つの課題が、情報の非対称性です。情報が偏在しているのは、官と民の間だけではありません。民間同士の間でも、情報の非対称性の壁はきわめて高いのではないでしょうか。例えば、海外展開に非常に強力なエージェントがいても、そのエージェントが有望な中小企業の情報を探すのは極めて難しい。逆に有望な中小企業がいても、今度は逆にその強力な海外展開エージェントへのアクセス方法を知るのが非常に難しいのが実態です。国内のどこかに、自分に合った有望なM&A先が必ずいる。仮にそうだとわかっていたとしても、お互いが互いを見つけるのに、非常に高い機会費用の支払いを強いられているのが現状です。だから、一部のM&A事業者が高収益体質を享受できる。それは決して悪いことではありません。それはすなわち、日本の市場における企業情報の流通の悪さの裏返しでもあるのです。まさに、日本の中小企業市場の最大の課題の一つは、この情報不足にあると言えるのではないでしょうか。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。運営事務局に問題を報告
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