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【企画書大公開】ソフトバンクで社内起業「ワークスルー」が企画書に書いた課題と10年後
 今回は、SBイノベンチャーで事業化検討中のベータ版サービスとして展開している「ワークスルー」が、ソフトバンクの新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」を使って社内起業した際の企画書を紹介する。この制度では書類審査を経て、審査員への中間審査、その後役員への最終プレゼンが通れば、事業化の本格検討に至るという流れで実施されており、今回の企画書は中間審査の際に使用したものになる。
新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」の中間審査用に作成した企画書。当時のキーカラーはゴールド。ハイグレード感あるサービスであることを訴えたかったという。
現在のウェブサイトデザイン。キーカラーをブルーに変更し、明るさと親しみやすさを出した
 それだけに全41ページある企画書の中には、リアルな「あるある」から、ユーザーとなる営業担当者の困りごと、外出先で仕事をする上で必要なもの、ことなど、生の声が詰め込まれている。
 加々本氏は「中間審査では、事業の詳細を伝えるよりも、その事業がどれだけ魅力的か、ユーザーの課題がどんなところにあって、それを実際にどう解決できるか、という事業の骨子を伝えられるかが重要なので、この市場がいかに魅力的なものかを軸に作成している。書類審査では、定型のフォーマットに文字だけを記入して応募するので、本格的なプレゼン資料はこれが最初。ここから、企画書の作成とプレゼンが求められる」と、中間審査の役割を説明する。
 企画書内では、「スペースを短時間利⽤したいと思っているビジネスマン」と「時間帯によってアイドルスペースがある飲⾷店事業者」の双方が抱える課題と各ペルソナを記載。ペルソナに「課題を感じる頻度」や「⽇中の顧客単価」などを盛り込むことで、課題者の悩みを浮き彫りにする。
 あわせてビジネスパーソン120人と飲⾷店5店舗にアンケートや対面インタビューを実施し、市場の声を捉える。「自分自身ソフトバンクの法人営業担当者という現職をいかして、同僚やその知り合いを通じて120人の声を集めた。アンケートは最低100は集めないと説得力がでないので、周囲の人に協力してもらいながら、100を確保できるようにした。ワークスルーは、ユーザーと飲食店のそれぞれが持つ課題を同時に解決しないといけないビジネスモデルなので、両方の声を聞けなければ、納得のいくサービスは成立しない。それぞれの課題をしっかりと聞き取ることで、同時に解決できると思った。それだけにアンケートやインタビューはしっかりと取り組んだ」と力を入れる。このアンケートやインタビューを通じて、ビジネスパーソン、飲食店双方のアーリーアダプターも獲得する。
120人へのアンケートと対面インタビューは、社内の同僚や知り合いに協力してもらいながら進めた
 通常のカフェ利用とワークスルーを利用した場合の時間の差は、企画書の24ページに「効率化された『5分』」として端的に示される。「図版を作るときは要素を詰め込みすぎないようにしている。1つのスライドで、1つのグラフなど、伝えたいことは1つに留めるように意識している」という。
「効率化された『5分』」では、ワークスルーだから生み出せる5分を端的に図式化している
 「企画書はあまり内容を詰め込みすぎず、見やすさと理解のしやすさを優先して作成した。プレゼンすることを前提にしているので、口頭で補足できる部分は省いている。プレゼンするときは原稿などは用意せず、ただし、ページごとに話す内容はすべて決めておき、その場に応じて対応した。事前に10回以上は通しで練習をしていて、プレゼンの練習は繰り返したが、原稿は作らないというスタイル。プレゼン中に原稿を読むことは難しいし、スライドを見るだけで話せることを目標にしている」と、プレゼン主体のスタイルを確立している。
 企画書内には、国内の潜在市場規模、市場のトレンド、競合比較など、新規事業立ち上げの際に必要な要素が盛り込まれている。「カフェをビジネスで利用している時間数や単価といったデータはないので、都市部における営業担当者の数を既存データから抜き出し、インタビューから導きだした利用回数を元に試算した。ただ、これだけだと弱いので『市場規模推移』として、副業、複業系のワーカーが増えていること、それによって短時間の利用市場は成長していることを客観的な数字で示した」と2段構えで説得力を出す。
市場規模は営業担当者の数を既存データから抜き出し、インタビューから導きだした利用回数を元に試算
 プレゼンを受けた審査員からは「市場規模などの数字はもっとブラッシュアップする必要があること、直近で狙っていく市場を今以上の解像度で見せられるようにすることなどのアドバイスがあった。資料全体としては、ユーザーの声やそこから得られたデータを掲載している点、さらにユーザー側だけではなく、飲食店側の課題も入れ込めた点が評価できる」とコメントを受けたとのこと。
 「中間審査で重視されるのは、市場に対する課題とチーム構成。企画書でも8ページ目にメンバー紹介を入れているのはそのため。まず、前提として課題が存在するのか、その課題に対しチームで解決できるのかを審査されるので、そのあたりはしっかりと入れ込むように作った」と加々本氏は当時を振り返る。
 実際にワークスルーのプロジェクトを立ち上げた感想を聞くと「ソフトバンクに籍をおきながら起業に向けて挑戦できるので、やってみる価値は十分にある。ただ、起業のアイデアは会社のビジョンにあっていなければならないし、会社にとってプラスかどうかを常に考えていなければならない。そのあたりはプレゼン資料にも絶対に入れておく必要がある」と、社内起業ならではの心構えがあるとのこと。
 また「企画書の37ページからは『10年後の世界』として、未来を語っている。1~2年後に運営を続けるのは難しい事業では『やらなくてもいい』という判断になるので、5年後、10年後にどういう姿になっているのかを伝えることは大事。投資家に利益を還元できるくらい、中長期的に事業は大きくなるということを示せなければと思う」とした。
中長期に渡り事業が成り立つこと、未来を示すことが重要
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