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『エンダーリリーズ』で注目を集めるBinary Haze Interactiveの戦略をCEO小林宏至氏に聞く。自分たちが作りたいものを作る、国内でオンリーワンの存在になることを目指して」
※Nintendo Switch版とPC版は2021年6月22日配信、Xbox One版は6月29日配信、プレイステーション5、プレイステーション4版は7月21日配信
 同作のパブリッシングを担当するのは、本作が初タイトルとなるBinary Haze Interactive。「日本から世界へ対して世界観や雰囲気を重視したコンシューマー向けオリジナルタイトルだけを発信するゲームパブリッシャーとして誕生しました」(リリースより)との決意表明が極めて印象的な同社だが、果たしてどのような経緯で設立されたのか。その戦略は? そして、今後どのような展開を予定しているのか。代表取締役 社長 兼 CEO 小林宏至にお話を聞いた。
 僕はもともとネバーランドカンパニー(※)に在籍していて、2Dのコンセプトアーティストとして、家庭用ゲーム機向けソフトを5~6年作っていまして、その後Webのベンチャー企業などを経て、31歳のときに立ち上げたのがアドグローブとなります。創業のときが、リーマンショックの直後くらいだったので、状況的にはあまりよくなかったはずなのですが、早くやりたいというのもあったので……。
※ゲームの開発会社。おもな開発タイトルに『
――アドグローブ自体は、どのような会社なのですか?
小林ゲーム開発だけではなく、 Webサービス、スマホアプリ、AI、ネットワークインフラなどの開発や設計をおこなう会社です。ただ、創業当初から、ゲームを始めとして“オリジナルで自分たちのプロダクトを作りたい”という思いが、ずっとあったんです。それが、会社の体力面も含めて、ようやく実現できるメドがついたのが、いまから2年前でした。結果として、10年近くかかりましたね。それで、オリジナルゲームを開発する会社ということで、Binary Haze Interactiveを設立しました。
――あえて、子会社として設立した意図は?
――10年近くかけて、やりたいことができる体制が整ったということですが、この10年はいかがでしたか?
――ここまで会社を拡大できた理由はどこにあると自己分析されていますか?
小林やはり人に恵まれたのがいちばん大きいと思います。あと、当社は上場しないということをコンセプトにしているので、それも大きかったのかと。これは少し専門的な話になってしまうのですが、非上場で会社を大きくするには、銀行からの融資が大事になるのですが、当時大金融緩和が来ていて、銀行からの調達がものすごくしやすかったんですよ。できたばかりのITの会社は、まずVCのほうを叩いてお金を出してもらって、僕らはIPO(新規上場株式)をがんばりますというのがセオリーだったのですが、当社はその真逆をやっていたんですね。それが結果的によかったのかなと思っています。
――上場しなかったからこそ、人材に恵まれたというか、人の縁に恵まれてここまで順調に来られたということですね。
Binary Haze Interactive初のタイトルとなる『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』。
ゲーム画面1枚の持つパワーを重視している
――10年間ゲームを開発されてきて、得られた知見は?
 実際のところ、みんなが“ゲームを作りたい”と思ってイメージしているものって、インディーゲーム的な作りかただと思うんです。気心が知り合った仲間がそんなに長い期間をかけずに作るという。1本に4~5年かかりきりというのもしんどいということに気づきました(笑)。
――新会社を設立されて、世間ではインディーゲームが盛んになってきて、みんながいろいろなゲームを作っている状況の中で、小林さん的にも「これがやりたかったことなのではないか」という気づきがあって、ご自身も「やってみよう!」という気持ちが芽生えたのですね?
小林そうですね。コンシューマー向けにオリジナルでゲームを作ってみたいという思いはありました。自分は根っからのコンシューマーの人間なので。当社はパブリッシャーとしては小さな会社なのですが、そういう会社が流通に乗せるというのは、昔は難しいことでしたが、いまだとダウンロード販売の割合も増えてきて、Steamというプラットフォームも出てきた。僕らみたいな会社が全世界にゲームをお届けできる環境ができていたので、リスクを追うならこちらに乗ってみようと思って始めたんです。
――それで、Binary Haze Interactiveの第一弾タイトルとなる『エンダーリリーズ』が生まれたのですね?
小林オリジナルのゲームを進めようとなったときに、社内で企画を集めたんです。そこでもっとも“売れるな”と思えたのが、当社のグループ会社であるLive Wireに所属している岡部君(岡部佳祐氏)の企画だったんです。ちなみにLive Wireの代表は、もとネバーランドカンパニーの高田さん(高田誠氏)で、けっきょくそこがつながるという(笑)。『エンダーリリーズ』を発表したときに、“もとネバーランドカンパニーのスタッフが作った”ということで話題になりましたね。
――ネバーランドカンパニーはいまだにファンが多いですからね。
――身内にはてきびしいですね(笑)。
 でないと、後発でよくわからない会社のゲームって目立たないですし、そもそも遊んだらおもしろいのは、いまでは当たり前だと思っています。昔みたいに各社がオリジナルのゲームエンジンでゼロから作るという時代でもないので、そうなると土台のベースの技術はそんなに差はありません。であれば、よりクリエイティブな要素が大事になってくるのだろうと思います。
 僕らは ITやAIの開発もやっていますが、サーバーまわりや技術的なところ、また雑用的な部分はどんどんツールやロボットが行う範囲が拡大していくと予想しています。なので、デザインや企画、そしてプログラマーに求められる役割も、よりクリエイティブに変化していくと思っています。そういったところを重視するためには、ゲーム性がおもしろいのは当たり前で、魅力的な世界観や、コンテンツとして興味を持ってもらえるような世界観を重視していきたいです。
メトロイドヴァニア系のタイトルとして人気を博している『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』。
――そんな状況がありつつ、岡部さんが企画した『エンダーリリーズ』が、小林さんの心にフックしたのですね。
小林アンデッドと少女の組み合わせが印象的でした。さらに、ふつうなら敵となることが多いアンデッドが味方として登場するというのは、おもしろくなりそうだなと判断したんです。それで開発をスタートさせたのですが、紆余曲折がいろいろとありまして……。岡部にプロトタイプを制作してもらったところ、ぜんぜん違うものを作ってきたんです(笑)。
――あら。
 そこで、「あの企画がよかったのだから、1回原点に立ち戻って、もう1回やってみよう」ということで、がんばって作ってもらったのですが、今度はゲーム画面的になかなか思うようなクオリテイーが出せなかったんです。そこからテコ入れをして、いまのゲーム画面の状態になるまでは、僕もかなり口を出しました。
 そのうちに、ようやくいまの状態にほぼ近しいゲーム画面ができあがったときに、「ゲーム性がちゃんとおもしろくなれば、確実に売れるだろう」と思って、あまり口出しをすることはなくなりました。ゲーム性の部分はネバーランドカンパニーは得意なので、あまり心配はしてなかったんですよ。
――その点は全幅の信頼を寄せていたのですね。
 『エンダーリリーズ』というゲームは、Live Wire がディレクションとして旗を振りながら、アドグローブはメインプログラミングと、アセット開発のお手伝いをしつつ、背景などのアートや色使いのセンスの部分で、モントリオールスタジオがお手伝いをしているというプロジェクトですね。
――ゲーム画面のクオリティーを上げるとのことですが、何か秘訣のようなものはあるのですか?
 じつのところ、僕はあと2本別のゲームを作っているのですが、2本ともそういったコンセプトのタイトルですね。

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