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 大規模な土石流が起きた静岡県熱海市では発生日の3日から、県内外の多くの消防隊員や警察官が救助・捜索活動を続けている。6日まで東京都内の消防隊の指揮を執った東京消防庁即応対処部隊の宮沢裕隊長が7日、朝日新聞などの取材に応じ、悪天候で、二次災害の危険と隣り合わせの活動を続けたことを明かした。「安全を第一に考えながら、一刻も早く助けを待つ人を救助したいという思いで活動した」という。
 東京消防庁は3日に約120人を派遣した。中心となったのが昨春に発足した災害救助のプロ集団・即応対処部隊だ。
 本格的な活動は4日午前6時から。土石流の被害が特に大きかった川の上流と下流に分かれ、被災者の救助・捜索活動を始めた。安全を確保しつつ効率よく活動するため、まず無人飛行機(ドローン)で被災状況や危険箇所を把握した。
 現場は、土砂のぬかるみがひどかった。建物の2階部分まで土砂が達していた場所もあった。捜索のために建物に近づこうとした隊員が土砂で腰まで埋まり、動けなくなることも少なくなく、土砂の上に板を並べて動線を確保した。
 体力的にも過酷だった。土砂や建物の中に生存者がいる可能性があり、重機の利用を控えたためだ。隊員らはスコップとカゴを使い、手作業で山のような土砂を黙々と掘り、かき分けた。「一刻も早く救助したいと土砂を取り除き続けた。地道な作業がどうしても必要な現場だったが、もどかしい思いをしていた隊員もいたと思う」
 小雨が続き、二次災害の警戒にも気を使った。土石流や土砂崩れをいち早く把握するため、上流に監視員を配置し、異変を覚知するセンサーを設置した。警報が鳴り、何度も活動をやめて避難した。緊張感で張り詰めていた。「いつ土砂が崩れてくるか、建物が倒壊するか、心配が尽きなかった。我々が被災すれば助けられる人も助けられない」
 即応対処部隊の大規模災害派遣は今回が初めて。被災者の救出はもちろん、ドローンや特殊車両を活用して現場の状況を把握し、後続部隊と共有することも重要な任務とされており、これまで訓練を重ねてきた。
 宮沢隊長は「資材を効果的に活用して、正確な情報をつかみ、適正な活動方針を決めることもできた」と成果を述べた。また、活動を引き継いだ現地の同僚らに「安全を確保した上で、救助を待つ人全員を助けるとの思いで取り組んでほしい」とエールを送った。(岩田恵実)
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 〈東京消防庁即応対処部隊〉 大規模災害での救助活動を専門にする部隊。300人以上(災害関連死含む)が犠牲になった2018年の西日本豪雨や、北海道胆振(いぶり)東部地震を受け、20年春に発足した。ドローンや水陸両用の「エアボート」、悪条件でも走行できる「全地形活動車」や「高機動救助車」を活用し、迅速な情報収集と救助を担う。隊員は約40人で、大半が消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)の経験を持つ。大規模災害があれば、全国各地へ駆けつける。
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