影を伝いて | 中国新聞デジタル

2021/8/4 6:51
　夕暮れ時、ＪＲ広島駅南口の地下広場で不意にセミの声が聞こえた。いぶかしげに辺りを見回す人もいる。「熱中症」はセミにもあるらしく、日陰を探すうちに紛れ込んだのかもしれない▲地上の広島地方では、かんかん照りが続く。通勤客もウオーキングの人も建物や街路樹の影を伝うように歩く。信号待ちの間にも、道路標識や支柱のつくる影に身を寄せている。「影踏み」のようでも、本人にしてみれば、気楽なものではあるまい▲日なたでの仕事を余儀なくされる職人さんには、「炎熱地獄」も同然だろう。遮るものが何一つない。空調ファンの付いた作業着は、この夏も人気らしい。せめて一時しのぎになってくれれば、いいのだが▲もっとも、夏休みの自由研究には、むしろチャンスだろう。自宅から影を伝いながら行ける道は、朝昼夕でどう違ってくるか。手づかみにできるくらい弱った「熱中症」ゼミは、気温が何度の時、どこに何匹現れるのか…。蚊も、猛暑が苦手と聞く▲自由研究には、それはそれで一つ、気掛かりの種もある。出来栄えを案じるあまり、保護者の「影」がちらつくことだ。教育熱はやはり、ほどほどに越したことはないようで…。
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