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英コーンウォールで行われたG7サミットでは、パンデミックからの世界の復興をテーマに討議が行われた。共同声明では中国に対しウイグルや香港の人権尊重を要求したり、初めて「台湾海峡の平和と安定の重要性」に直接言及するなど、中国への圧力をやや強めた印象だ。尾河眞樹氏のコラム。写真はイメージ。2017年5月撮影(2021年 ロイター/Thomas White)
また、注目したいのは今回のサミットで合意に至った「ビルド・バック・ベター・ワールド(より良い世界の再建)」構想だ。新興国の40兆ドルに及ぶインフラ需要に対し、国際金融機関を通じて民間企業の資金も活用しながら開発を支援するという構想であり、明らかに、中国が新興国に対し巨額の資本を投じながら推進している「一帯一路」に対抗する狙いがうかがえる。
<G7vs中国>
中国はこれまでも制裁に対する対抗措置は行ってきたが、今回の法制化によって、中国への圧力を強める欧米に対し、改めて強い態度で臨む姿勢を示したと言えよう。バイデン米大統領は6月3日、中国の軍事産業に関わる中国企業に対する、米国人による証券投資を禁じる大統領令に署名した。トランプ前大統領下で行われた「関税戦争」のような派手さはないものの、米議会の対中強硬姿勢は変わらず、じわじわと中国に対する締め付けが進んでいるように見える。
加えて、今回のG7サミットでは、依然としてやや欧米間の温度差は感じられるものの、トランプ時代と異なり、協力して対中政策を推進しようという姿勢がうかがえる。G7vs中国の構図が進むのは、さすがに中国にとっても脅威だろう。
<人民元高、背景に4つの要因>
こうした動きを嫌気してか、6月以降の中国人民元相場は、対ドルでやや弱含みで推移している。5月末には人民元は一時、1ドル=6.3570元と、2018年5月以来の高値を付けた。足元の水準は、同高値からわずか0.7%安程度の6.4元付近。ちょうど1年前が7.1元だったことを踏まえれば、足元は「弱含み」とはいえ、大幅な元高水準であることに変わりはない。このまま元高トレンドが進み、2018年3月末の1ドル=6.24元を突破すれば、トランプ前政権下で米中摩擦が深刻化するなか、15%も進んだ人民元の下落幅を完全に取り戻すことになる。
では、米中摩擦が続いているにもかかわらず、なぜ足元、人民元相場は上昇トレンドを描いているのか。理由としては、第1に、ドル安の影響が挙げられよう。国際決済銀行(BIS)が公表している、60の国と地域の通貨に対するドルの価値を示す、ドルの名目実効為替レートだが、これと、ドル/人民元のグラフを重ねると、ほぼ連動している。今年1-3月は米連邦準備理事会(FRB)の「正常化」への期待によってドルは一時上昇したが、昨年の3月をピークに下落トレンドが続いている。これまでの人民元高は、このドル安に押し上げられた結果といえる。
第2に、米中間の金利差が挙げられよう。中国人民銀行は昨年5月以降、基準となる政策金利(1年物のローン・プライムレート)を3.85%に据え置いているが、中国の国債利回りが10年物で3.2%付近と高めであることも、人民元に資金が流入しやすい背景となっている。
第3の要因として、中国の力強い景気回復も重要だ。中国では今年1月に新型コロナが一時再拡大したことで、再びロックダウンとなったが、そこから再び経済が正常化しつつあり、民需主導の景気の持ち直しが期待できる。また、世界経済の回復傾向や、テクノロジー需要に支えられ、今年3月の全人代で掲げた「今年6%以上の成長」は楽に達成できる見通しだ(当社は9.3%を予想)。特に、今年7月には中国共産党が結党100周年を迎え、来年には5年に一度の共産党大会が控えるなかで、中国は是が非でも強い経済成長を内外に示していくであろう。
第4に、景気回復に伴う中国の経常黒字の急拡大も要因の1つだ。黒字額は、コロナショック後の国内総生産(GDP)比0.3%から今年第1四半期には2.4%へと目覚ましく拡大しており、これが潜在的な人民元高圧力につながっている。
<アナウンスメント効果>
元高是正のもう1つの方法として、人民銀行が金融緩和に踏み切る手もある。しかし、今年に入って人民銀行は、むしろ資金を吸収している。これは、コロナ下の金融緩和で生じた過剰流動性による不動産や株式の過度の値上がりへのけん制、また、将来の信用リスクへの警戒が背景にあると思われる。資金供給や利下げをしては整合性が取れない。
今回の外貨預金準備率の引き上げは、これによって外貨が新たに人民銀行に預け入れられれば、外貨の流動性が下がり、外貨の金利上昇によって元買い外貨売りの需要が鈍るというのが狙いだ。ただ、200億ドルの外貨準備預金の積み増しは、規模としては小さく、前述した数々の人民元高要因を抑えるほどの影響力はない。それよりも、「過度な元高にはブレーキをかけたい」という当局の意思を伝えるという、アナウンスメント効果のほうが大きいだろう。
<中国当局の思惑>
となれば為替政策でも、人民元高は輸入コストの低下につながるため、ある程度容認しているのではないか。また、元高容認は、鉄鉱石や銅などの一次産品価格の上昇による輸入インフレへの対抗の目的もある。これとは逆に、トランプ前政権における貿易摩擦では、人民銀行が元安を容認することによって、貿易面で優位に立とうとしていた可能性は高い。
今回の外貨預金準備率引き上げは、元高のペースダウンの目的であって、相場を反転させるほどの意図はなかったとすれば、今後も人民元高トレンドはじりじりと緩やかなペースながら継続する公算が大きい。足元の為替市場では、世界の中央銀行による「正常化」の動きに注目が集まっている。一方、G7で垣間見られた民主主義国家の結束と対中包囲網の動きを踏まえれば、中国問題は、今後も市場を揺るがすリスク要因の一つとして注目すべきだろう。
*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*尾河眞樹氏は、ソニーフィナンシャルホールディングスの執行役員兼金融市場調査部長。米系金融機関の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替ヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。著書に「本当にわかる為替相場」「為替がわかればビジネスが変わる」「富裕層に学ぶ外貨投資術」などがある。
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編集 橋本浩

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