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 着物の船内服は、3年生の授業「課題研究」のテーマの一つで、昨年度から取り組んでいる。国際協力の大切さや異文化を尊重する意義を、宇宙から世界へ伝える狙いがある。
 昨年度は女性用の試作品を完成させた。火災に備えて着物の裏地には燃えにくい繊維でできた生地を縫い付けた。動きやすいようにズボン型のはかまと上着に分け、機器に引っかからないよう袖と裾は絞った形にした。着崩れしないように前合わせは面ファスナーを用いて、重ね襟は縫い付けた。はかまのウエスト部分は幅広にして帯を表現した。
 製作のきっかけは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが主催する、高校から大学院までの学生が対象の「衛星設計コンテスト」。電気・建築科の小田知志教諭(45)が昨年5月ごろ、児玉伊智郎・前教頭からコンテストの応募を持ちかけられた。宇宙で活用できそうなアイデアを自由な発想で競う「ジュニアの部」に的を絞り、2人でテーマを考えた。外国人にも好評で、生徒が運営に携わる「着物ウィークin萩」がヒントになった。
 昨年7月、工業系学科と商業系学科の3年生男女計10人で取り組みを開始。裏地に使う難燃繊維は3種類を比較実験して決めた。燃やして火が消えるまでの秒数を測定。宇宙船では洗濯できないため、臭いの対策をする必要がある。臭いの元となるアンモニアを生地にしみこませ、8時間後の濃度を調べた。工具を入れる着脱可能のポケットを付けるなどの工夫もしてデザイン画を制作。ミシンや手作業で1カ月かけて縫い、試作品を作り上げた。
 コンテストでは「日本ロケット協会宙女(そらじょ)賞」「ジュニア実験賞」の2賞に輝いた。「大きく想像が膨らむ提案」「宇宙開発での男女共同参画促進につながる活動」などと評価された。
 その後、宇宙飛行士の山崎直子さんに試作品を送った。山崎さんは、重力が微小な船内では足や腰回りが細くなる傾向があるため、ウエスト部に伸縮性をもたせることや、素材は静電気が発生しにくいと良いなど、経験者ならではの助言をくれた。
 取り組みは今年度の3年生男女計12人が引き継いだ。より高度な実験をしたり、被服の専門家に話を聞いたりして素材やデザインを見直し、実用化に向けて改良する計画だ。メンバーの総合ビジネス科3年福田柚理(ゆり)さん(17)は「昨年よりも良いものを作ることをめざす。宇宙の魅力を伝えられたら」。今年度は男女共用を試作する。
 小田教諭は「日本人飛行士に着てもらうのが最終目標。宇宙について考えることで、地上の生活を暮らしやすくする取り組みを考えることにつながれば」と話している。(中川壮)
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